2011年3月(その1)
(3月9日)大局観⇔前向きなアルツハイマー
論考執筆の準備を少しずつ進めている。
(A) ネットワーク時代の町医者としての建築家(仮)
(B) の下読みを兼ねて、羽生善治さんの新刊『大局観』(角川oneテーマ21)を読む。
頭を抱えてしまった。なんかすごく俗っぽくなってて、文章もぐだぐだとまでは言わないけれど、ゆるゆる。方向性はあるのだけど、以前のような「ある一点をめざす」という感じ、そう「めざす」という感覚がゆるくなっている。
よく歳をとってまるくなる人は見るけれども、それは第一線から退いている、降りている訳でパフォーマンスは確実に落ちている。今回の羽生さんもまさにそんな印象なのだけど、羽生さんは厳しい勝負の世界の第一線でなお活躍されている。
今回の文章も、「羽生さんはすごいな。やっぱりいいこと言うな」と読もうと思えば読める。でも今回の文章には、はっきりとアルツハイマー的徴候が出ている。
少し話はそれるけど、1月22日に開催されたトークイベント《平倉圭×國分功一郎×千葉雅也》のレポートを、僕は書き直した。(修正版トークレポート)。
これは千葉雅也さんの論考「インフラクリティーク序説」(『思想地図β vol.1』所収)が難解で解釈を間違えたからなのだけど、精確に言えば事情は少し違う。
《平倉圭×國分功一郎×千葉雅也トーク》でも、平倉さんと千葉さんとの議論は僕もちゃんと聴いていた。「類似」と「疲労」の問題。「ドゥルーズの疲労」の問題。(平倉圭×國分功一郎×千葉雅也トーク[中編・後編])
千葉雅也さんの「インフラクリティーク序説」の論旨は、昨今の情報インフラの発達が、人々に必然的にアルツハイマー的徴候を押しつけてくる(情報が豊富に入手できるのではなく、情報を網羅することがおよそ不可能なのだ!)なかであっても、それでも前向きに生きて行く、そこに可能性を見出すということである。
が、これが分かっていても、体が受け付けない。怖いと思う。判断を留保してしまう。千葉さんの論考の最後に出てきたフィッツジェラルドとかが微妙。フィッツジェラルドについては詳細を知らないので、強引に太宰治に置き換える。
僕は太宰の文章は好きだけど、太宰を認めたくない。酒飲みのぐだぐだ、酔っ払いはやはりダメだと思う。なぜなら酒を飲むか飲まないかは自分でコントロール可能だから。これを認めてしまったら、なんでもありになってしまう。酒飲みのぐだぐだは、後向きのアルツハイマーとしてまず切り捨てねばならない。
他方、羽生さんの場合はどうか。勝負の世界に身を放り投げる。あるいは戦場に身を放り投げる。そこは自分でコントロールできない。そのなかで頭が飛んだり、思考が変態する場合は注目に値する。
「太宰=後向きのアルツハイマー」に対して、「羽生=前向きのアルツハイマー」という区別が成り立つ。
この区別をした上で、千葉雅也さんの「インフラクリティーク序説」に挑むべきだし、平倉圭さんの『ゴダール的方法』の「第5章 受苦と目撃」に挑むべきだろう(解読しやすくなるが、より一層恐ろしくなる)。
※やはり、現時点での僕が書く論考では、この次元については留保し、扱わない。
『〈建築〉としてのブックガイド 』のガイド法
(3月8日)フェア・フェア・フェア・フェア
國分功一郎選書フェア
- 作者: 國分功一郎
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2011/01/21
- メディア: 単行本
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西山雄二『哲学への権利』(勁草書房)刊行記念
哲学への権利フェア
- 作者: 西山雄二
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2011/02/17
- メディア: 単行本
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ゼロ年代の論点
ゼロ年代の論点 ウェブ・郊外・カルチャー (ソフトバンク新書)
- 作者: 円堂都司昭
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2011/02/18
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『〈建築〉としてのブックガイド 』(明月堂書店)刊行記念
《本》
※ 『〈建築〉としてのブックガイド 』は面白い本なのですが、なかなかその魅力を伝えるのが難しい本です。なので棚を作るのも難しい。そこで、たなをつくるプロセスをドキュメンタリーにしてお届けします。
会場:ジュンク堂書店新宿店(7F東側23番人文書フェア棚)
会期:〜2011年3月31日(予定)
(3月7日)倉地くん公開中!!
ぜひ!!!!!
保坂和志『猫の散歩道』と柴崎友香『ビリジアン』を毎日ちびちび読む。
保坂本のある文章。これは加藤陽子さんの『それでも日本人は「戦争」を選んだ』のことを言っていると気づいた。これについてはまた改めて。
柴崎小説『ビリジアン』はこれまでの柴崎小説とは明らかに違うのだけど、そのなかの「スウィンドル」はこれまでの柴崎小説そのものだった。十七歳だった。
(3月6日)トークレポート!!!!!
タイトル: ドゥルーズと異形の文学者たち
(3月5日)映画デー
出演: 倉地久美夫
監督: 冨永昌敬
みなさまも、ぜひ!!!
(3月3日)ひな祭りの超豪華プレゼント!!!
■出演:國分功一郎×千葉雅也
■ タイトル:スピノザの哲学原理
《ポッドキャスト》
- 作者: 國分功一郎
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トークの時は、『スピノザの方法』の第一部を読み終えたところでした。今は第二部を読んでいます。ササッとは読めないので時間はかかりますが手応えはすごく良いです。そして僕は今、店のPOPを書き換えようと思っています。
哲学的思考を身につけるための導きの書
國分功一郎『スピノザの方法』は、スピノザについて書かれた論考ですが、これはスピノザに限った本ではありません。哲学に興味のある人は全ての人が読めます。とにかく國分さんの思考の筋が美しい。
佐々木敦さんのツイート
國分功一郎『スピノザの方法』。ひとつひとつ丁寧に論を積み上げてゆく説得力と、そこから次第に見えてくる新たなるスピノザ像のスリル。対象にしっかり寄り添いつつも強靭な批評的クリエイティヴィティを発揮するという意味では、山城むつみ『ドストエフスキー』以来の刺激的な書だと思います。
これを『新潮』の矢野編集長がリツイートしていました。矢野さんならおそらくこう書くでしょう。
國分功一郎『スピノザの方法』。ひとつひとつ丁寧に論を積み上げてゆく説得力と、そこから次第に見えてくる新たなるスピノザ像のスリル。対象にしっかり寄り添いつつも強靭な批評的クリエイティヴィティを発揮するという意味では、東浩紀『存在論的、郵便的』以来の刺激的な書だと思います。僕も、この読書感は、「あ、あ、あずまさんだ!」って思いながら読んでいます。
もちろん両者の思考のスタイルは違います。東浩紀さんは「ぐいぐい」という感じでピッチャーで言えば、松坂投手。他方、國分功一郎さんは「スパスパ」という感じ。もちろん、これを仕上げるのに十年かかっているので瞬発的にというのではなく、「丁寧にスパスパ」という感じ。岩隈投手のような感じです。
『スピノザの方法』を読んで、國分さんの《思考のフォーム》を盗んで欲しい。そう思えば、5670円(税込)は決して高くはない。むしろ安い。また自分の《思考のフォーム》が崩れてきたと思ったら読み直して矯正して欲しい。僕が座右の書として定期的に読むとしたらこの3冊です。
あと、僕は哲学者ではなく、書くのは評論文なので、座右の書としているのはこの3名
保坂和志『小説の自由』(新潮社)
大江健三郎『核時代の想像力』(新潮選書)
※ 保坂さんの本に付箋がないのは、これが2代目の本だから。
(3月2日)3月だ!
■ 3月〜GWまでは《教育書・保育書シーズン》なのでフェアはちょっと縮小。でも作業的にはやることがけっこうある。
■ トーク、観劇も少々抑え気味。
■ その分、読書&執筆(主に下読み)に時間を割きたい。
《目玉企画》
■ネットワーク時代の町医者としての建築家(仮)
■『〈建築〉としてのブックガイド』のガイド法
(3月1日)祝福